我ら夢あり明日あり野望あり4
個人差
五人の女と一人の男は(二人のサッフィズムを含む)ファミレスを出てから高田馬場駅についた。ここから真琴と光は
自宅に帰るためJRに乗り換える。残りの女四人は(矢張りサッフィズム二人を含む)東西線で葛西の駅まで乗ることに
なる。
今年はまだ学生証を今日もらったばかりなので定期をまだ買っていない女三人ともう一人の女(ここでもサッフィズム
二人を含む)が切符を買う。
切符を買ってホームに行くとあまり人はいなかった。まだ帰宅の時間には一般的には早いし一般の学生は今はまだ
春休みである。西から来た電車の中も人は少なく、四人は並んで座ることが出来た。
座ると四人は(つまり二人のサッフィズムを含む)思い思いにカバンやバッグから色々取り出す。輝美は今日学校から
もらったばっかりの英単語帳を取り出した。これは早稲田西予備校の学生は皆もらう者である。単語帳はこの他に熟語
と古文単語の全部で三冊をもらった。中は一色刷りのごくシンプルなもので大きさも市販のものと比べてやや大きい。書
き込みできる余白のスペースなどが多いとも言うことはできるが、単語帳にそのような機能を求める者はあまり多くない。
結局色々カラー刷りで洗練された中身の市販の単語帳を使う者が多くなっていく。今はまだ予備校が始まる直前の時期
だから予備校を信じて其の単語帳を使う者が多いだけである。月日が経つにつれて其の使用パーセンテージは目に
見えすぎて減っていく。勿論ちゃんと使いこなすことができればと言うか全て覚えれば無駄になるような物ではないの
だが、其れに試験の単語熟語を全て任せるには一寸魅力が少ないかも知れない。
結局は毎週月曜日にある英単語と英熟語、そして古文単語のテストの前にだけ其のテスト範囲にだけ目を通す、と
いうのが一般的な使い方という事に落ち着いてしまう。ひどい時には予備校の寮のごみ箱の脇に資源ゴミの日に並ぶと
いうことも少なくない。
だがとにかく今はまだ予備校を全面的に信じている輝美は其の単語帳を取り出した。
そして留美は矢張り英単語帳。涼子は日本史の一問一答集を取り出す。そして新庄もブランド物のバッグから取り出
した。ゲームガールアドバンテージ。そしておもむろにスイッチを入れると眉間にしわを寄せて思案にふける。そして
ふと表情を崩したかと思うと今度は小声だが「あっ、このっ、あーなんでよーー」などといった声が聞こえてくる。
隣の三人はその声を気にしないで(無視して)自分の勉学に励んでいたが、新庄が隣にいた涼子に尋ねてきた。
「ねー、涼子ちゃん、あのね、このゲームなんだけどここのステージでこの敵が出てくるんだけど、どうしても勝てないの
よねー。いや、勝てることは勝てるんだけど、どうしても仲間が一人はやられちゃうのよ。一人でもやられちゃうとエンディ
ングがベストエンディングにならないでしょー、どうして勝てないのかなー。一応此方の最強メンバーで戦っているんだけ
ど一ターンで倒せないんだよねー」
自分が教えている教科の参考書を開いているのはお構い無しである。どうやら新庄がやっているのはシミュレーション
ゲームらしかった。
「さあ、あたしゃはこの手のゲームは好きだけど、これはやってないなぁ…。というか先生、あたしゃは浪人生なんです
けど…」
正論である。予備校ではゲームや漫画などは見つけるのは難しい。それに建前として参考書を開いておくのが正しい
浪人生の姿であろう。だがゲームと聞いて輝美がゲームの画面を覗き込んできた。
「あ、そこはですねー、前のステージで仲間にした人がいたですやんかー。その人の特殊能力を使うとこの相手の防御
力が下がりまんのや。この相手限定ですけど」
新庄はその言葉に得心を得た。
「あー、いたいた。能力値は結構高かったんだけどもう使ってなかったんだよね。なるほどー、このためにいたのかー」
「って、あのキャラクターは準主役級でっせ。これからの能力の上昇も高いですし、このステージじゃなくても物凄く使え
ますよ。何より主人公の兄ですから…」
「だーって、主人公の女の子と血は繋がってないからなんかラブラブモードに入っていきそうだったんだもん。こんなかわ
いい子にはもったいないでしょ?だから他のメンバーも女の子だけのメンバーで戦ってたのよー」
そういわれて画面をよく見てみると確かに其処には女性のキャラクターしかいなかった。
「せ、先生、このゲームって女のキャラクターあまりいないし、使えるのも少ないのによくこんな終盤まできましたね…」
「そりゃそーよ、このゲームかわいい子多いんだもん。それよりありがとねー輝美ちゃん。お礼にキスしてあげるーー!!」
「だぁーーーー!!!!わ、わてはいいですってば。あ、いやっ!!やめてーー!!あーー、貞操の危機やーーーー!!!!」