我ら夢あり明日あり野望あり

 

 


 あれ?

 五人は近くのファミリーレストランに入った。

「普段もよー来るんですか、ここ?」

「うん、やっぱりファミレスって便利だからね」

 涼子が答える。

「他には良く行く店なんか何ぞおありでっか?」

「あ、あとはね、おいしいハヤシライスのお店があるの。お値段も結構リーズナブルで。あとはカレー全般もおいしいの。おなかが

空いている時は各種のカツなんか乗せてもいいわね。あとはそこのランチセットもおいしいわよ。懐に余裕があればお勧め」

「ほー、そうでっか」

「うん、あたしゃたちはよくいくよ。一週間に六回とか行くこともあるし」

「はー、殆ど毎日でんな」

「うん、そうだね」

 そこへウェイトレスが注文を取りに来た。

「あ、わてはレイコー。」「あたしゃドリンクバー。」「私はケーキセットをティラミスとレモン紅茶で。」「私フライドポテトとオレンジジュ

ース。」

「ご注文は以上でよろしいですか?」

「あ、あの、これ……」

 光がウェイトレスに何か紙を渡した。

「あ、か、かしこまりました…」

 四人はその光景をさして気にすることなく話に没頭していた。そもそも目に入っていなかったのかもしれない。そして暫くしてウェイ

トレスが注文したメニューを持ってきた。

「此方がアイスコーヒーになります、此方はドリンクバーのグラスになります。あちらのカウンターでご自由にお飲み物をお選び下さい。

こちらは…」

 ウェイトレスが品物を置いていく。

「此方がカルビビビンバ丼と豚の生姜焼きとエビドリアとオニオンリングハンバーグとライスの大盛りになります。」

「は、あたしゃたちは頼んでない…」

 ぶんぶんぶんぶん!!光が頭を大きく振る。

「…若しかして光ちゃんが一人で頼んだの?」

 こく…。

「そ、そっか、じゃあ、あたしゃ飲み物とって来るね…」

 涼子はジンジャエールをグラスぎりぎりまでついで戻ってきた。若し飲み物を大盛りにできるとしたら絶対これも限界ぎりぎりまで

大盛りにしていただろうと思われる。ドリンクバーなのだから何度お変わりしてもいいのだが、何となくギリギリまで注いでしまうのは

涼子の性格である。そして留美たちのテーブルへ戻ってきた。

「早っ!!」

 留美たち三人はお喋りに夢中になっている。だがその話を黙って聞いている光が頼んだ料理の皿も全て空いていた。

 

 

結構・・・

 「皆はんは出身はどちらなんですか?」

「あたしゃは埼玉。通えないことも無いけど勉強に集中した方がいいだろって寮に入れてくれた。まあ通うとなると通学だけで毎日

疲れちゃうかからね」

「……東京…」

「私は島根出身なの。」

 さっき自己紹介した真琴以外が自分の出身地を答える。

「……島根…。…鳥取とどちらがどちらだか分からない……。右だっけ左だっけ…?」

「左よ」

 ニコニコしながら留美が答えた。

「留美さんって郷土があんなふうに言われても怒らないのはよーできてまんなー…(ヒソヒソ)」

「…というか私は光ちゃんがあんなに毒舌だとは外見からは想像もつかなかった…(ヒソヒソ)」

 

 

 「と、ところで講師の先生でこの人は良いとか止めといた方がいいとかってのはありまっかいな?」

 明らかに輝美があからさまに話題をずらした。

「うーんとね、二人とも早大文系の早大コースでしょ。早大英語の井川先生はさっき言ったよね、あとは二人とも選択している日本

史の新庄先生。この二人はうちの予備校でも評価は高いよ。あとは現代文の片岡先生も人気は高いね。もう一人八木先生ってい

う現代文の先生もいて、この二人でうちの現代文の先生の人気は二分してるかな。八木先生は、正に『受験現代文』って感じで

徹底してデジタルに現代文を解くタイプ。一方片岡先生は全てにおいて論理を重視するタイプ。論理的思考能力の向上で他の

教科の点数も底上げできるわね。ま、これは好みかな。それと英語Uの赤星先生はね、雑談がめちゃ面白い。何時も絶妙な

タイミングで雑談を入れてくるんだけどもね、普段のその喋り口調からは思いもつかないくらい面白い。教え方はオーソドックスだけ

ど丁寧で、英語Uは文法・語法だからすぐ点に結びつくからね。出ておいた方がいいと思うよ。」

 涼子のその言葉を光は時間割にメモなどをしながら聞いている。

「まあ、特筆すべきはそのくらいかな…。たださっきも言ったけど日本史の新庄先生にはくれぐれも気をつけてね。あの先生…」

「あの先生なあに?」

 その時今までは鉢植えで隣が見えなかったが、隣の女性が立ち上がって涼子達に声を掛けてきた。

「ぅっだぁぁーー!!し、新庄先生…」

 涼子は思わず手にしていたグラスを落としかけた。新庄は長い髪をやや淡く茶色に染めた少し妖艶さもかもし出す、留美とは違った

大人の女性である。

「涼子ちゃん、私に気をつけることってあったかしら?」

「い、いやべつに…」

「あ、そう、ならいいんだけど。」

 だが火種は留美からつけられた。

「先生もいいかげん生徒に手を出さないように、そして皆さんも気をつけるようにとね、仰っていた所です」

 ニコニコしながら新庄に言った。

「あら、自由恋愛に問題あり?」

「自由恋愛とイロキチとは違いますからね。オナニー覚えたサルじゃないんですから」

 輝美は顔を真っ赤にしながらも何も聞いていない振りをした。

「ふふふ、でもね、そのイロキチから離れられないって子は沢山いるのよね」

「それは結構ですけれども、私はもう今年の寮の新入生を二人頂きましたから」

 今まで顔色一つ変えなかった新庄の顔色が変わった。

「何、もう二人も!?ちぃぃ、やっぱり寮は便利だわ。なんと言っても今年はまだ授業が始まっていないからなぁ…。今年も私は

寮に泊まるけども、私の分も残しておくのよ」

 新庄は週に二日、寮のゲストルームを利用していた。

「うふふ、それは相手の方に聞いて下さいな。それこそ私も自由恋愛は大歓迎ですので」

「ふふふ、それならば早速今日寮に伺うとしよう。絶対留美ちゃんに手をつけられていない処女を頂くもんね」

 輝美は顔を下に向けて何も聞いていない振りをした。

「うふふ、お待ちしていますわ」

「ふふふ・・・」

「うふふ・・・」

 

 

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