夢の際2

 


 ギィ…。

 二人の後ろの戸が開く音。

 実羽とこれから初体験をするはずだった女性は慌ててお互い僅かに距離を取り、正面の壁を向く。

(ばれたかな?)

 実羽は何事も無かったかのような表情で思案する。

 チャポ・・・

 扉を開けた人物は何も言うことなく二人の右脇から湯船に入ってきた。実羽は目だけ動かしてその人物を認識しようとした。下腹部から下を見る

限りではどうやら少女のようである。実羽はそこから更に僅かに目線を上にあげて顔を見ようとした。そこにあった顔は実羽の記憶の引出しの一番

手前の部分にある顔であった。

(さっきの・・・。)

 先程三人でお喋りをしていた少女たちの一人である。

(確か名前は・・・あんちゃん。そう、あんちゃんだ。)

 その綺麗な長い黒髪のほうに印象が強く顔はすぐ思い出したが、三人いた少女達の内の一人の名前は少しだけ思い出すのに時間を要した。だが

そういった思案をする実羽とその少女の視線がピッタリと絡み付いてしまった。

(一寸何か疑っているのかな?)

 見られた(?)かもしれない相手が少女だったと言うことで二人が何をしようとしていたかは悟られなかったかもしれないが、何かをしようとしていた

のはばれているのかもしれない。二人があれだけ近付いていたのに、少女が入ってきたらいきなり慌てて離れた。それは確かに怪しいと勘繰られて

も仕方の無いことかもしれない。

 少女は二人の右脇の渕に腰掛けた。実羽ともう一人の女性はお互いあらぬ方向に目線を走らせ何も無かったかのようなふりをしていた。余りにも

わざとらしいのも逆に怪しまれるだろうと、二人とも大きな動きはしなかった。いや、少しでも動くとわざとらしい動きになりそうだったので動けなかった

というのが正解に一番近い。だが実羽はまた別な視線を感じることになっていた。

 すぐ脇の女性からの視線ではない。そうすれば当然それはもう一人の少女からのであることになる。だが実羽はそれはさっきと同じく好奇心からの

視線であると思った。だが実羽はさっきも気付かなかったのである。三つの視線のうち一つだけ、好奇心ではない、別の意味が込められた視線があ

ったことを。

 少女の視線に少しまた気分を良くした実羽はその少女に視線を送り、驚かせようという悪戯心が沸いてきた。少しずつゆっくり少女のほうへ視線を

実羽は動かしていった。少女の顔は直視していないが、僅かに平面ではないといった少女の胸のあたりに視線を止めた。

(お?)

 だがそれでも少女は実羽の方から視線を外すことは無い。自分が見られている事がわからないのか?いやそんなはずは無い。自分が見ている

相手が自分を見ているのだ。その視線の方向はすぐわかるはずである。そしてそこで、実羽は視線の端に今まで銭湯で見てきた少女には無い違和

感を感じた。

(ん?)

『肘と肩の間』

 そこに確かに少女のロッカーのキーはあった。これは実羽なら当然すぐ分かる、「ネコ」の意味である。だがまさかこんな子供が・・・。何かの偶然で

あろうか。腕を洗っている時肘を洗うのが邪魔でずらしたのがそのままになっているとか・・・。

 これが少女ではなくもっと成熟した女性であればすぐそうであるかないか分かるし、視線の意味も分かるのだが、何せこれは実羽にとっても初めて

のことであったので判断を下すのは容易なことではなかった。

 前述の通り実羽の経験の最年少は九歳である。だがそれは家庭教師をしていた生徒であり、自分が知っている人で、何度か会話したりあったりし

たことのある人である。他にも年端の行かぬ少女とは何度も経験があるが、それは不特定の人物ではなく、ある程度知っている少女を徐々に「そう」

していったのである。今回のように銭湯で見知らぬ少女とそうなったことは無い。

 もう暫く見極めるべきだろう。そう結論付けた実羽はまた露天風呂を楽しむ人となった。

 またのぼせそうになった実羽は湯船から上がり、足首だけ湯につけて淵に腰掛けた。だが。少女からの視線は何度も感じる。少女も視線をあちこ

ちに行ったり来たりしているのだが、明らかに実羽の所で何度も止まる。いや、何気なく観察していると少女の視線は実羽の隣の女性にも注がれて

いるようだ。少女と同じ肘と肩の間にキーを止めている女性。女性は実羽ほど少女の視線に感づいていないようだ。

 その光景に実羽は「不確定」から「多分」へ。そしてそれが「恐らく」から更に「確信」に変わりつつあった。

 最後に実羽は確信を行動へ移すためじっと少女の目線を見つめた。余りの視線の強さに少女はすぐ目線をずらしてしまった。だが実羽はそれでも

ずっと少女を見つめつづけていると、少女もちらちらと実羽に視線を送ってきた。

 それで実羽は次の行動を決めた。いやさっきから行動内容は既に決めていたのである。それを実行に移すことを決めたと言うべきか。

 実羽の行動は素早かった。

 隣の女性のほうを向いたかと思うと、左手を女性の頭に回し自分のほうを向かせ、さっき犯すことのできなかった女性の唇に自分の唇を重ねる。

(!!)

(!!!!)

 女性と少女。どちらのほうの衝撃が強かったであろうか。二人の心拍数をこれ異常ないくらい急激に跳ね上げた実羽の行動はさっきゆっくりと女性

とやろうとしていた行動とは比べ物にならないくらい激しいものだった。

 実羽は口全部で相手の口を覆う、舐める、吸う、そして犯す。露天風呂中にその音が響き渡った。女性は余りのことに何をしてよいか判断がつい

ていないようである。だが少女に見られていることは理解しているのだが次に女性が取った行動は実羽から離れたり拒否したりすることではなかっ

た。されるがままだった女性の舌が実羽の舌に絡みついてきたのである。

「んっ・・・ふぅ・・・。」「んんんっ・・・。」

 二人の嬌声が響いた。少女は目の前の光景に体が動かなかった。いや、目線だけは忙しく動き回り二人の舌や唇を追う。

 実羽は自分の予想通り少女がこの場から離れなかったことを確認してからまた暫く女性の唇を犯したあと、左手を女性から離し、少女の方に腕を

伸ばして人差し指だけを上げ、くいっくいっと自分のほうへ動かした。

 その行為の意味する所は見たとおりだが、少女はすぐに実羽の要求を満たすことはできなかった。さっきより激しい鼓動が外から少女の耳に聞こ

えて来ると錯覚しそうなくらい、少女は平常ならざる状態であった。

 だが、実羽がまた今度は視線も少女のほうへ送りもう一度同じ動きをすると、少女はその視線から伸びている操り人形に使う糸に捕まったかの

ように実羽と女性のほうへ歩き出した。二人の所へきた少女は今度はやや下を向けた実羽の指の動きにその場に膝をついた。少女がそうしてから

また暫く女性と口づけを交わして目の前で見せていた実羽は女性から唇を離し、正にとろんとした女性の目に微笑を見せてから、今度は少女に向き

なおす。お互いに少しづつ体を前に倒せばぶつかってしまう距離で実羽が少女を見つめてから、今度はゆっくり少女の頭に左手を回し、その左手に

視線を奪われた少女を右手を使って自分と正対させた。

 考えてやったわけではない。時間にしたらほんの一瞬実羽と見詰め合ったあと、実羽が唇を近づけてきた。そして少女は実羽と触れる前に瞳を閉

じた。

 少女のファーストキスはまるで包まれているかのように感じた。少しだけ唇の先と先とが触れ合ったかと思うといっぱいに広げられた唇で少女の唇

全てを包まれたり、少女の上と下の唇を交互に吸われたり、少女の舌を吸ってきたり。そして実羽の口は今度は少女の口の中を犯してきた。少女

の口の中に自分の舌を入れ、少女の舌を求めてくる。何もできない少女の舌に絡ませ、また少女の舌を吸い、伸ばした少女の舌を軽く歯で噛んで

みたり。

 少女は腕を不自然なほど真っ直ぐにぴーんと伸ばし、自分の膝の上に置いていた。だが実羽の口に犯されつづけていると、その緊張は少しづつ

融けていき、考えてやったわけではないのだが、自然に実羽の両方の脇の下に抱きつくような格好になった。

 そして実羽は思う存分少女の上の口の処女を奪ったあと、自分から少女の唇から離れ、立ち上がろうとした。

 その予想だにしなかった行為に女性も少女もありありと失望の色を見せた。が、実羽は女性の背中を軽くぽんと叩き、また少女には顎をくいっと動

かしついて来るように少女にいう。

 立ち上がって二人を見てからまた中の浴場へ戻った実羽は先ず女性が出てきてからそのあと数秒時間を置いて少女がでてきたことを確認する

と、自分のシャンプーなどが入っている籠を持ち、脱衣所のほうへ行く。

 脱衣所の中から二人の様子を見ていると、女性はすぐ脱衣所へ向かってきた。少女はといえば、さっき一緒に露天風呂に入っていた少女二人に

何やら話しているようで、その様子を見つづけていると、どうやら二人はまだ銭湯に残っているらしく、少女一人だけ脱衣所に向かってきた。

 先に脱衣所に入ってきたものの、どうしたらよいか分からない女性は、まだ着替えずに実羽のことを見ていた。だが実羽が少女の様子を見届けた

あと肘と手首の間に巻いていたロッカーのキーを外してロッカーを開けてから、タオルで体を拭いてから着替えを始めたのを見て、女性も着替えを

始めた。

 少女もその光景を見てから慌てて着替えを始める。

 グレーのスポーツタイプのショーツとスポーツブラを纏った上に実羽は無地の白のTシャツと、細身のジーンズを穿いて手際よく残りの荷物をまと

め、脱衣所を後にした。

 女性と少女も急いで着替えていたため、たいした時間をおかずにすぐ実羽の後に続いて出て行った。ロビーに実羽の姿が無い事を確認すると、

二人ともほぼ一緒に下駄箱のキーを開け、それぞれの靴を履き、外に出た。

 そしてそこには実羽が赤い左ハンドルの車の後部座席のドアを両方開けて、自分は運転席の隣に立っていた。幸い二人は歩いてこの銭湯へ来て

いたため、実羽の望む通りにはできる。流石に少女はやや躊躇ったが、女性が先に左の後部座席から車に乗り、実羽が外からそのドアを閉めた光

景を見ると、逆のドアから車に乗り込もうとした。そしてそのとき実羽が少女に見せた微笑に、少女は一つの安心を得ることが出来たような気がした

のであった。

 また実羽がドアを外から閉めると、車の前を回って運転席のドアを開け、全て開けきったウィンドウの上部を持ってドアを閉めた。普段はじゃじゃ馬

なエンジンを一発でかけた実羽はハンドルを大きく切り、ゆっくりと公道へのT字路へ向かい、そこで一時停止する。ウィンカーを上げて車や歩行者

が来ない事を確認すると今度はさっきの安全運転は何処へやら、一気にアクセルを踏み込み、素早くギアを上げていく。

 幸運の女神に魅入られたのか、厄介な国家権力には見つかることは無く、すぐに更に広い幹線道路へ出る事が出来た。いや、若しかしたら実羽

が美の女神で、対等な関係にある幸運の女神に頼み込んでいたのかもしれない、そう少女は思った。

 

 

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