夢の際

 

 


 新宿副都心。いや、既に新都心といったほうが的確となっている。新宿西口のビル街の中で実は一番高い都庁を中心に、

オフィス街、歓楽街、憩いの場、体を動かせる場所など、様々な表情を持つ。

 其の新宿駅から私鉄で二駅。時間にして五分も揺られると渋谷区に地名が変わる。其の駅から更に歩くこと十五分。やや

派手めな看板が光る、一つの公衆浴場にたどり着く。

『桃園湯』

 其れが其の浴場の名前だった。この辺にしては入浴料大人三百五十円は安い方である。スペシャルサウナセットが付いても

九百円。これだと浴場内のありとあらゆる設備を利用することが出来る。サウナ、休憩室、水風呂等等。勿論その他に通常

料金でも利用可能な露天風呂や、ジェットバスや、電気風呂なども利用は可能だ。

 そして、だが、またこの浴場が有名な理由が存在した。

 

 実羽は今日も左腕にロッカーのキーをはめておいた。(銭湯では通常ロッカーのキーはゴム等の紐の輪がついていて、其れを

腕なりに巻いておいてそして体を洗ったり湯船に浸かったりするのである)それも通常は肘の関節の部分に巻いておくのに、肘と

手首の丁度中央あたりにはめていた。畳にして四枚分くらいの外にある露天風呂の淵に腰をかけ、火照った体を夜風に

晒して冷ましている。

 だが其れはまた同時に今日の「獲物」を探す瞳でもあった。今この露天風呂には実羽一人。露天風呂と中の浴場をとを繋ぐ

戸の対称の淵に座っている。

 太股から下だけを湯船の中に入れていただけだが、それでもさっきまで全身湯船に浸かっていた為、下からの熱で全身が熱くなり、

一度完全に湯船から出ようとして左足を浴槽の淵に上げたときだった。

 ずっと長いこと中からも外からもお湯を浴びせつづけられてきたドアの割にはさしてきしむ音も無く、僅かにキィ…と浴場の内側に

ドアが開かれた。嬌声と共に入ってきたのは小学校高学年くらいと思しき少女が三人。ショートカットの髪形をした少女が二人と

肩まで濡れた黒髪を伸ばした少女が一人。

 実羽が今日狙っていた獲物とは一寸趣向が違うがそれでも実羽の守備範囲には十分入っている。実羽がこれまで堕とした最低

記録は九歳。家庭教師で教えていた子である。

 三人はどうやらスポーツクラブに所属しているらしく、今日の練習の話題で会話に盛り上がりを見せていた。曰く、

「あんちゃん最近スパイクの調子いいよね」

とか、

「みーちゃんやっぱりセッターになるの?」

「ぽーちゃん最近いきなり背が伸びたよね」

といった会話が続いた。

 実羽は其の会話に耳を欹て、その情報の辻褄を合わせようとしていた。三人は太股から下だけを湯船につけただけでずっと会話を

続けていたので実羽には基本的な三人についてのことは分かった。

 あんちゃんと呼ばれる髪の長い子はエースアタッカーとして活躍しているらしい。みーちゃんは三人の中で一番背の小さいショート

カットの子で、今までリベロだったのが、トス上げの上手さを買われてセッターにコンバートされたらしい。ぽーちゃんは逆に一番背の

高い子で実羽には一番日本的な顔立ちをしていると思えた。身長は既に160センチを超えているものと思われ、高校生や、或いは

大学生でも通じるのではないかと思える。

 三人は会話の最中何度も実羽の方にチラチラと視線を飛ばしてくる。流石に小学生でも実羽のプロポーションのよさは分かるのだ

ろう。いや、逆にそういうのに興味がある時期かもしれない。明らかに自分たちとは違う、たとえ其れは「ぽーちゃん」の小学生離れした

プロポーションをもっても勝負の同じスタートラインにすら立てない、明らかに別次元のものへの興味であった。

 実羽の方は三人の視線を軽い快感と共に受け止めていた。実羽自身も己の体には自身はある。見られることがまた更にプロポー

ションに磨きをかけるとも思っている。またそれ抜きでも見られることは好きであった。また何より自分に視線を送っているのが

小学生三人というのが実羽を軽いトランスの旅へと誘っていた。

 実羽は銭湯では胸などは隠さない。嫌味にならない程度にだが見せ付けている。今も三人の視線を一番受け止めていたのは適度な

筋肉によって上を向き続けている実羽の乳房であった。明らかに大きいのだが、それでも形は崩れていない。乳房は時として様々な

呼び方をされるが、実羽のは美乳、そして巨乳、二つの言葉が当てはまりそうである。

 三人は其の実羽の乳房の先端が三人達の視線によって大きさを増したのが分かったであろうか。実羽はまた湯船に太股から下を浸し、

足を組んで三人を正対した。流石に足を開いて秘部を晒したりはしない。其れはまた別の時にである。今はそれぞれ感じの違う少女

三人に視姦「させている」ことだけで十分興奮の波打ち際へ足をつける事が出来ていた。

 正対はしているが目線はあらぬ方を見続け三人に実羽の意識は感じさせていない。三人は其の内一度肩まで湯船に浸かり、そして

また浴室へと戻っていった。

(んー、三人ともいい感じの子だったわね…。それぞれ毛色が違ってみんなあたし好み…。…。……でも私はあの頃…)

 実羽は自身が三人と同じ年頃の頃、詰まりあの頃受けた「あの事」を思い出していた…。

 

 今思えば悪くない道へと進むきっかけにはなった。だが其れは結果論であって、あの時受けた「感じ」は決して自分で望んで受けた

ものではない。

 法的に言えばあれは強姦ではないはずだ。だがあれを強姦以外何といえばよいのであろう…。

 

 其の時、僅かながら実羽が昔の記憶に旅立っていると、また露天風呂の戸が開かれた。

 実羽の目には四十歳前後と思われる女性が一人で入ってきた。胸から足の付け根までタオルを伸ばして隠し、段になっている風呂に

静かに入ってきた。湯船にタオルはつけられない為、湯船に入りながらタオルを適当にたたんでいき、肩まで浸かりきった所で湯船の

淵にタオルを置いた。

 今日はお湯が透明であった為、ある程度湯に浸かった状態でも其のプロポーションは見て取れた。年の割には(実羽の憶測での年齢

だが)崩れていない体型。スリーサイズはウエスト以外実羽の方がありそうだが、それでも十分実羽の鑑賞には堪えられた。

 実羽はまたロッカーのキーに目をやったが、こちらは普通に左腕の関節部分にはめられていた。

 其のことを確認すると、実羽もまた湯船に浸かった。実羽は同じ湯に浸かっている相手より後から浸かったわけだから相手が浴室に

戻ってから湯船を出たかったが、先ほどから何度も浸かったり出たりを繰り返していた為、すぐに血が頭まで巡ってきてのぼせかける。

変な意地を張っても今の相手にはしょうがないと、湯船から出て淵に両足を乗せて出る。

 露天風呂というからには当然外にある。勿論覗かれたりしないように、高い簾などで囲ってあり、出歯亀が目的の人でもない限り外か

ら覗かれることは無い。周囲には狭い空間だが、上はほとんど無限のスペースが広がっているといっても良い。其処から吹き込んでくる

丁度良い涼しさを伴った風は実羽の火照った体を優しく撫でてくれた。

 風の精霊が実羽の周囲でダンスを踊っていると、女性は湯船から上がり、またタオルで体の正面を隠して露天風呂から出て行った。

(でも今の人もありだったな…)

 唯一、だが絶対実羽の求める条件には当てはまらなかった為、ただ其の姿を見送るしかなかった。

 実羽が露天風呂に入ってから時間にして三十分も経ったであろうか。一度露天風呂を出て歯を磨こうと実羽は思った。風呂で歯を一緒

に磨くこの癖は前のパートナーから何度も止めてといわれた。銭湯に限らず実羽は家でも他の宿泊先でも風呂で歯を磨く。前のパートナー

ならずとも、止めてくれとまで言うかどうかは別として、実羽の外見からすれば其れは一寸似つかわないとは思うかもしれない。

 だが其の実羽の予定は一瞬にて変更されることになる。立ち上がろうとした瞬間、戸の開く音がして、足音はあまり立てないようにして

女性が一人入ってきた。

 年齢は二十代前半くらいであろうか。タオルは持っていたが其れで体を隠そうとはせず、ただ手に持っているだけである。目線を湯船の

方に移し、其れが実羽の目線と一瞬同一点上で平行になった。相手は思わず目線をそらしてしまったが、目線をそらしたのは実羽の方も

一緒だったので、どちらが先に移したかはわからなかった。

 立ち上がろうと体重を前にかけていた実羽は其の動きを誤魔化す為浅く座り直す振りをする。女性は一度風呂の淵に腰掛けようとしたが、

すぐに思い留まって湯船に浸かった。そしてすぐ実羽は其の女性が自分のほうへ視線を向けているような気がした。

 何気なく視線を上げると、其の女性の「左腕の肘と肩の丁度あいだ」にロッカーのキーがはめられていた。分かる人には分かる合図。

「ネコ」

 これが「肘と手首の間」であれば「タチ」である。だが勿論其れがたまたま偶然によってそこへはめられたということもある。そのため

今すぐ断定することは出来ない。これからじっくりそうであるか否か見極める必要がある。だがしかし。実羽の勘は目の前の女性が

「そうである」ことを確信していた。其れも経験は少ない。…いや、この感じからすれば全く無いのではないか。齢25にして長年の

経験がそう教えていた。

 実羽はお湯が光の屈折だけで隠そうとしている女性の胸のあたりへ視線を移した。そして女性の胸を堪能してからそこから更に

僅かに視線を上げる。そしてそこでまた女性と視線が合った。

 女性はすぐまた視線を移してしまったが、実羽は今度は視線をそらさずに其の女性の瞳を見詰めつづけている。すると相手の

女性も其の視線を感じたのか、あえて実羽の視線に自分の視線を重ねてきた。

 このとき既に実羽は相手が「そう」であるかどうかではなく、「どう」しようか思案をめぐらせていた。

 女性は今度は実羽の視線をしっかり受け止めながら、少し下に視線を落とした。すっかり夜風のタオルで乾いた実羽の胸に目を

やる。純粋に目を奪われるのと同時に、相手の胸を見詰める事で「私はそうである」という主張も含まれていた。

 実羽は其の視線を心地良いものと感じながら長方形の湯船の短い辺にお互い背を預けている状態から、腰を上げて、一番奥から

露天風呂のドア寄りの長い辺の真中へ移動して湯船に浸かった。距離にしておよそ二メートル程女性に近づいたことになる。

 相手の女性ももうこの状況を理解しているだろう。だが実羽が読んだ通り女性は経験が無く、どうしたらよいか分からない。自分の

方から近づいていってよいのだろうか。それともただお湯に浸かる場所を変えただけなのか。この視線はたまたまなのか。だが

このチャンスは逃したくないし・・・。

 様々な思いが女性の思考を占めている時、実羽は其の葛藤すら気付いていた。相手の視線は何度もよこされている。だが如何

行動したらよいのかがわからない。おそらくそうだろうと思った実羽は、矢張りこういうときは自分から行動してあげるのが一番である

と思い、更に女性との距離を詰めようと立ち上がる。静かに湯の中を歩き、女性と距離にして凡そ五十センチの所に来てまた湯に

浸かった。お互いドアを背にした格好で湯に浸かっている為、当然同じ方向を向くことになる。そのため相手の女性は視線を実羽に

送ることが出来ずにいた。だが今やもう実羽はすぐ脇に来ている。この状況では最早決定的といっても良い。この後の展望も

分からないし、すぐ隣の実羽を向いて見る事も出来ず、この後如何なるのか心臓の血液運搬運動は速さと強さを増す。

 其の時。自分の両脇において湯船の底につけていた女性の手に何かが触れた。いや最早それは何か分かっている。実羽の右手で

あった。ほんのお互いの第一関節同士が重なっただけでしかなかったが、それは女性にとってのスタートの号砲の代わりでもあった。

 実羽は右手の付け根の部分を支えにして更に女性に近づいた。もう十センチも二人の間には距離は存在しない。相手の女性も

実羽の顔を見詰めることは出来ないが、実羽の胸のあたりに視線ははっきりと移してきた。

 実羽は右手を更に女性の左手に絡ませて、指と指が絡みつくように軽く握った。実羽はずっと女性の瞳を見詰めている。女性も

実羽の望んでいることを察し、ほんの少しの勇気に動員願って実羽の瞳を見詰め返した。

 お互いの確信と意志が確実な結論に達し、実羽はほんの数センチだけ、目の前の薄いピンク色の実羽が犯すのを好きな性感帯

に己の唇を近づけようとした。

 

 

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