暗蜜 其の八
「んんっ・・・。」
琴美と静御前は唇を重ね合わせた。静御前の冷たい唇が琴美の唇から熱を奪おうとする。だが琴美の唇が冷たくなるより先に
静御前の唇が熱を帯びてきた。
今の口づけは特に激しいというものではない。見た目に動きも静かである。だが二人はお互いの唇をゆっくりと、そしてしっかりと
確かめ合っていた。一番甘美な時間である。時間はゆっくり過ぎている。時間が二人のために動きを緩めているかのようだ。
「琴美・・・そちが他の者に気を使っているのなら私は全ての身分を捨てても結構です。私はあなたさえいればそれでよいのです。
・・・いえ、それ以上にあなたが他の者に抱かれることが何より辛いのです。このままでは・・・このままでは私はおかしくなってしまい
そうです・・・。」
「静御前様・・・。」
琴美はその申し出が嬉しくもあったが、それ以上に辛くもあった。琴美も静御前を慕っている。もし静御前がこのまま琴美を連れて
どこかへ逃げていってくれるのならそのままついていきたかった。そしてそれは松としてもである。だが同時にその松は己の使命を
忘れることも出来ていなかった。抜け忍になることが怖いのではない。静御前とであればどこへ逃げてもいいし、また追手の覚悟も
ある。だが、それは同時に静御前を危険にさらすことでもある。それだけはなんとしても避けたかった。また豊臣忍軍を敵に廻すと
いうことはあの楓を敵に廻すということでもある。松は楓を静御前とはまた違った意味で慕っていた。人柄に優れ、忍びの技術に優れ、
松が目指す一つの答えでもある。豊臣忍軍全ての責任と悩みを抱え、それでもなお完璧な忍びの頭領として豊臣忍軍を率いている。
そんな楓であるから、松は江戸城にいる間一度楓に書簡で相談したことがあった。
今自分が静御前という一人の女性を慕っていること。それは自分の命をかけてでも守りたいほどの存在であること。同時に自分が
忍びであることを忘れられないこと。本来であれば忍びにあるまじき事であろう事なのだが、楓にはその全てを打ち明けて相談した。
自分がこう思っている。楓様にはこんなことは無かったでしょうか。自分はどうすればよいか、と。
松はまさか楓はこんなことで悩んだことは無いだろうと思っていた。豊臣を統べる完璧な頭領としてまったく考えられない姿である。
だが楓から返ってきた書簡には意外なことが書かれていた。
楓にも一人の人を慕って悩んだことがあるというのだ。楓もその人のためであれば全てを捨てられるし、また自分の身の危険など些細な
ことである。またその人物も追手などにそうそうやられる人物ではなく、一角の腕を持った人物である。それだけに今の松よりも二人で
暮らすことに抵抗はなかった。だがそこで楓を押しとどめたのは自分が背負うものと、同時にその人物が背負うものの大きさである。
もし二人にそれらが無ければ楓は抜け忍の道を選んだかもしれない。ただ自嘲気味にこう書いてあった。
『その相手にはまた別に慕う相手がいたみたいだが。』
だがかなわぬ思いだから諦めたわけではない。二人の背負うものの大きさがそれを思い止まらせた。これが今の松との大きな差で
あった。書簡はこう締めくくられてあった。
『私はあくまでも豊臣の忍びの頭領として動く。もし松が抜け忍になれば全力でそれを追う。だがそれは松とその人との離別を願うもの
ではない。もし二人が幸せになれて、私もそれを豊臣の頭領としても私個人としても祝福できる道があればそれを全力で追う。松も
それを目指せ。・・・このようなことはおおっぴらには他の忍びにはいえないが、自分の後悔の無いようにするのが一番。答えにはなって
いないかもしれないが、お主が決めることだ。お主が忍びとしてその人と幸せに暮らせる道が無いと思うな。』
自分が忍びとして静御前と暮らせる道が無い訳ではない。
松はその事をすっかり失念していた。そうなのだ、何もこの道が閉ざされた訳ではない。険しい道のりかもしれないが、何より静御前が
いればどんな困難であろうと越えられるではないか。その道を己自身で閉ざしてどうする。
松は決意を固めた。必ず静御前を迎えに江戸城へ戻る。例えその時銃弾が飛び交う中であろうと血雨が降ろうと、自分は静御前と
二人でこの江戸城をでる。それまでは静御前には江戸城で待っていてもらう。
「・・・必ず。必ず私が静御前様をお連れ致します。その時までどうかお待ち頂けますよう・・・。」
琴美は静御前の両肩を持って、静御前を見つめてそう語りかけた。
「まことですか?まことに琴美は私を連れて二人になってくださいますか?」
「はい、必ずお連れに参ります。必ず二人になれるときが来ます。その時までどうかお待ち頂きますよう・・・。」
「・・・分かりました。私は琴美を信じます・・・。」
「・・・二人の時だけは松とお呼び頂きますよう・・・。」
「分かりました、松・・・。」
静御前が松に覆いかぶさった。
静御前の舌が松の首筋を静かに、ゆっくりなぞる。その行為に松は声を押し殺して耐える。
「松・・・そなたの胸は本当に形が整っておりますね。まるで絵師に書かせたかのごとく完璧な形をしておりまする・・・。」
静御前が松の首筋を舌でなぞりながらも松のその胸の形に見とれる。何度見ても美しい。
「んっ・・・あっ・・・。」
「そして柔らかくもあり・・・。」
静御前は手を松の胸を下から持ち上げる。
「それでいて私の手を弾き返そうとするほどの弾力もある・・・。」
今度は持ち上げた胸を手で軽く揉むように掴む。
「んはぁぁぁぁ・・・。」
松は松にしては珍しいほど興奮していた。忍びとして鍛錬を受けているから普通の交わりでは自分の快感ぐらいは自由に押さえることが
出来る。だが静御前が相手だとその制御が途端に困難になる。意識して落ち着こうとは思うのだが、本当の快感が松を襲い、松をもってしても
我を忘れさせてしまう。
だが今日はそれ以上であった。静御前の一挙手一投足がすべて松の弱いところを責めているかのように松は僅かな静御前の動きに
すぐに反応してしまう。
「松、あなたを慕っています・・・。」
「静御前様・・・。」
二人はまた唇を重ねた。もう二人の唇はお互いが火傷しそうなくらい熱かった。二人はお互いに静かに舌を相手の口の中へ潜り込ませた。
相手の舌が自分の舌を求めてくる。自分の舌も相手の舌を求める。静かだが濃厚な口づけはいつ果てるとも分からなかった。
「ん・・・・・・は・・・・・・ぁ・・・・・・。」
先に静御前が唇を離した。
「松・・・私はもう・・・・・・堪りませぬ・・・・・・。」
静御前は松を見つめてそう言った。松の方ももう堪らなくなっている。静御前は立ち上がり、着物の帯を静かに解いた。着物の前が開くと、
そこからは逞しい男根がピクッピクッと脈を打ってその先端から液を滴らせている。静御前も半陰半陽であった。
その容貌には似合わず、男根はきわめて凶暴そうである。並の男根の倍近くの長さと、二周り以上の太さ、そしてこれ以上無いくらいの
熱さ。
静御前は何も言わずに一歩進み、腰を突き出した。松も何も言わずに大きく口を開けてそれを一気に目一杯頬張る。
「くぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」
静御前は堪らず声を漏らす。今までも松との口づけでもうこれ以上無いくらい過敏になっている状態で、静御前と同じくらい体全体が
火照っている松がその全てを包み込んだのである。これには静御前は堪らなかった。
「あはぁぁぁぁっ!!!!」
どくぅっ!!!!!!!!
「んんっ!!!!」
静御前はその精を松の口の中に放った。静御前はまだ出す気などこれほども無かったのだが、そのあまりの快感に耐え切れず
漏らしてしまった。松の方もまさか静御前が精を放つとは思っていなかったのでいきなり大量の精液を口の中に放出されたことは
驚いたが、それでもとてもいとおしいものを一滴も漏らすまいと何とか全てを口の中に留める。
「あ・・・ああああ・・・あはぁぁぁぁ・・・。」
静御前は脚ががくがくしていた。
「ま、松・・・。」
そして立っていることがかなわず、松にもたれかかるように前に倒れてしまう。松は静御前をしっかりと受け止めた。
「松・・・、今日の私はどうかしています。・・・ほんの僅かな快感に体が信じられないくらい反応してしまうのです・・・。このまま・・・このまま
あなたと交われば果たしてどれほどのことになるか見当もつきません。正直少し怖い気も致します・・・。」
松は静御前を抱きかかえながらまずは口の中にある大量の精液を飲み込んだ。これだけの量はおそらく生まれて初めてである。
またその静御前の精液の中に忍びが使う媚薬でも混じっているのではないかと思うほどそれを飲み込むと体の奥から松を突き動かしてきた。
「静御前様・・・。私も・・・私もほんの少しのことで自分がおかしくなってしまいそうでございます・・・。私もこのまま静御前様と交われば
どうなるか分かりませぬ・・・。」
「あなたもですか・・・。」
静御前はもたれかかっていた手で自分の体を起こし、松を見つめてそう言う。
「はい・・・。・・・・・・ですが・・・静御前様とであれば・・・その先を見てみとうございまする。・・・二人堕ちられる所まで堕ちてみとう
ございまする・・・。」
「松・・・。」
静御前もその気持ちは同じであった。松とであればどこまでも自分は堕ちていける。どこまで堕ちてもかまわない。
「松・・・もう参りますよ・・・。」
松の女陰は既にどんなものでも受け入れられるくらい濡れていた。・・・いや、静御前のためだけに濡れていたのであろう。静御前が
松を布団に倒し、静御前がその上に跨ると松の女陰は更にその奥から静御前を待ちきれないかのように後から後から陰液が溢れてきた。
それは通常であれば考えられないぐらいの量である。松の女陰から尻を通り、布団を濡らし続けている。
静御前がその男根を松の女陰の入り口にあてた。
「んはぁっ!!」
松はそれだけで軽く達してしまった。松の体も少しピクピクしている。静御前はその事を悟ったがそれでもゆっくりとズプズプという音を
静かに立てながら松が待ち望んでいる静御前の男根を松の女陰へ突き立てていった。
「んっ!!・・・・・・くぅぅぅぅっ・・・・・・。」
松はもう平常心は保てていなかった。一度達してしまってまだ落ち着いていない状態なのに一番松を狂わせるものが一番松が狂う
所へ突き立てられたのだ。
「ああ・・・松・・・・・・今までとは比べ物にならないくらい・・・あなたの女陰は熱くて・・・私を包んできます・・・。」
「んっ・・・ああっ・・・くぅぅぅぅっ・・・。んはぁっ!!んんっ!!うぅぅぅぅ・・・。」
「ああ・・・もう痛いくらいに私のが大きくなっているのに・・・松のあそこはすべて飲み込んでしまいそうです・・・。」
静御前が言うように静御前の男根は今やその殆んどが松の中に収まっていた。松はその速さのままでその男根の全てを松の中へ
突き入れた。
「ああ・・・・・・松・・・。あなたが私を包み込んできます・・・。あなたが私を求めてきます。すごい分かりますよ・・・。私の男根を掴んで
離さないかのようです・・・。」
「静御前様・・・。静御前が私の中で脈を打っています。その一拍一拍が私の中の壁をえぐってきます・・・。」
静御前はその男根の全てを松の中に突き入れると、一度松に倒れこみ、今のその快感を松と共有していた。静御前の男根をすべて
受け入れるぐらいだから松の女陰は決して小さくは無いのだが、だがそれでも静御前の男根の大きさに合わせて大きくなったかのように
松の女陰は静御前の男根と一分の隙間もなくピタリと松の女陰の中と密着していた。
静御前はその余韻をずっと楽しんでいたかったが、だが今の状態のままでいるだけでも静御前の奥からその精がどんどん突き上げられて
くるのが分かる。このままいるだけでも静御前はすぐにまた達してしまうだろう。
そうなる前に静御前はゆっくりと腰を動かし始めた。
「まっ・・・松・・・。」
「静御前様・・・。」
二人はお互いを見つめながらお互いの名を呼んだ。
「ああ・・・松・・・私はもうまた果ててしまいそうです・・・。」
「静御前様、何度でも私の中で達してくださいませ・・・。そのたびに私が静御前様のをまた大きくして差し上げます。今日は二人が意識を
失うまでお互いを求め合いとうござりまする・・・。」
「松・・・今日は・・・今日は二人でとことん堕ちましょうぞ・・・。たとえそれが許されない道であろうとも私はかまいません・・・。」
そういうと静御前は腰の動きを少しずつ速くしていった。
「あっ!!あっ!!静御前様・・・。」
「松・・・松・・・また・・・また果てまする・・・。また私は堕ちていきまする・・・。」
静御前はもう達することを我慢することは無かった。いきたければすぐに松の中で達する。例えそれが何度目であろうとも静御前には関係
ない。何度果てようとも今日はその男根が治まるということは無いからだ。
「あっ・・・あっ・・・あっ・・・!!松・・・松!!!!」
ごぷっ!!!!
「ああああああああーーーー!!!!」
松も静御前が達してすぐに絶頂を迎えた。
「はぁはぁはぁ・・・。松・・・。慕っております・・・。」
静御前はすぐに動き出した。もう松の女陰でジュプジュプと音を立てているものは松の陰液か静御前の精液か分からない状態である。
「松・・・あなたのあそこが・・・私の男根を・・・信じられないくらい強く包んでいます・・・。そんなにされては・・・。私は・・・私は・・・ああっ!!!!」
二人は言葉どおりお互いが気を失うまで交わりあった。松が気を失ってからも静御前は3度その精を松の中へ放った。そして最後に精を
放つと同時に静御前も気を失って松の上へ倒れこんだのである。二人にはもう交わっている間はその体位を変えたりする余裕など無かった。
「・・・・・・今日ほど日が明けなければよいと思ったことはありません・・・。」
二人が気を取り戻してから東の空が黒以外の染料によって染められてきた。日が明ければまた否応無しに日常へ戻らざるを得ない。
「・・・今生の別れというわけでもありませぬ。私は一時も静御前様を忘れることはございません。」
「松・・・。私もです。あなたが言うその『時』まであなたの事を思いながら待つと致します。さすれば少しは気も紛れるというものでしょう。」
松、ここ江戸城では琴美だが、大奥では一日の暇も無いほど毎夜誰かに呼ばれていた。その立場上松は断ることは出来ないし、建前と
してはそのために松はここにいるのである。他の女官たちも松を抱きたがっている。勿論その中で静御前ほど心を許したのはいないし、
松を静御前ほど慕っている者はいなかったが。だがそれでも皆、松の体の良さを知っていたし、また松と静御前の仲は知らない。こぞって松を
自分の寝室へ誘っていた。次に表立って、というか誰にも咎められずに静御前の寝室を訪れることが出来るのは今度は2週間先である。
空は情というものを知らないのか、それとも万人に対して情を注いでいるのか、どんどん明るい色に染まっていく。
「…では…参ります」
松が静御前の前で指をついた。
「松…」
静御前がそう言うと松が顔を上げた。そしてゆっくりと、二人が予め示し合わせていたかのようにまた唇を重ねた。