暗蜜 其の五

 

 

 その様子は自分たちよりはるか前方にいる真田軍には、よりはっきり見えたであろう。勿論幸村にもその知らせは届いている

はずだ。

 一千にも満たない真田軍。五千をゆうに上回る伊達の本隊にまだ十分戦える騎馬鉄砲隊の精鋭が六百とでははなから相手に

ならない。

 以下に幸村といえど、一人で五千人を相手に出来るはずも無い。激戦を生き残った真田軍といえど、陸奥で鍛えられた伊達の

精鋭とはよくて五分五分にしか戦えないだろう。

 幸村といえどこの状況ではもはや策を弄することは出来ない。織田信長が今川義元を十分の一の兵で打ち破ることが出来たのは、

義元の休息地の選び方の誤りと、更に今川軍の本陣に豪雨のため気取られること無く近づくことが可能だったからである。

 今のこの状況のように広い平地では兵力と兵の士気、兵の鍛錬度と将の戦術が勝負を決める。戦略で戦術を有利に進めることは

出来ないのだ。早く言ってしまえば力と力の勝負。そしてその戦いでは明らかに幸村の方が分が悪い。

 そしてそれは幸村も勿論悟っているだろう。いつもの幸村であれば無駄な戦いは避けるはずだ。

 はずだった。

 だがこの場合、無駄とは、数字と計算の上での非合理とは完全な同義ではない。

 幸村は秀頼の安否は知らないはずだったが、それでも燃えさかる大阪城の天守閣を見ることが出来ていれば、若しくは、その知らせを

聞いていたら、大体のことは悟ることが出来ているだろう。・・・そしてそこには桜も・・・。

 ともかく楓には幸村の取る行動が予測できた。こうなれば狙うは家康の首一つである。だがこの状況ではもはや無理である。おそらく

そうなった場合の幸村は・・・。

「はっ!!」

 幸村は疲れているであろう愛馬に小股と覇声で自分の意志を伝える。先ほどと同じく先頭にたって伊達の騎馬鉄砲隊の左斜め後ろの

伊達の本隊に突撃する。そしてそれはおそらくは最期と覚悟しての・・・。

 だが。

 だが伊達の本体は楓が予想したような対応を取らなかった。取れなかったのではない。明らかな命令系統の意志の下、伊達の本隊は

幸村の突撃の延長線上から真田軍と切り結ぶ前に左右に分かれたのだ。

 その陣形に幸村は当然いぶかしげったが、今更何か策を弄そうとしても今より戦況が良くなるとも思えない。ならば、少しでも将に

近づける相手の策に乗る方がまだ勝機はあるように思えた。だが。だがやはり綺麗に分かれすぎる。これはいったい何を意味するのか。

何を狙っているのか。無人の野を駆ける幸村の目に伊達の本陣の旗印が見えた。

 だが、その本陣ですら既に幸村の右手側に避けている。その本陣の後方の兵すら左右に分かれる為移動している。これでは伊達の

本陣を突っ切ってしまう・・・。

(・・・突っ切る?)

 その時幸村の頭に二つの絵が思い浮かんだ。

 それは幸村が家康の本陣に切り込み、家康を討ち取る場面。・・・そしてその後家康に取って代わって天下を統べる一つ目の若武者・・・。

 いや、その脇には秀頼がいる。・・・だが後見人となって実質的な支配者になっているのはその伊達者だ。

 その結論に達した時、幸村は馬上で口だけで笑みを作った。

(面白い。どうせあの独眼竜のころだ。私が成功しても失敗してもその後の策は用意出来ているのであろう・・・。・・・。ならば私は私の

大願をかなえさせてもらう!!)

 心を決めた幸村は更に愛馬に声をかけ、一気に政宗の本陣の前まで馬を走らせた。だがそこで幸村は気持ち良く走っている馬に、

「どうどう。」

と声をかけて止まり、伊達の旗印の方を向いた。

「さしもの伊達の軍も我が一騎駆けを止められなんだか!!散々伊達の軍を打ち破った以上ここに倒すべき相手はいなくなった。骨は

折れたが伊達の軍を破った以上もはや東軍に敵はいなくなったぞ!!」

 そう大音量でおそらく向こうの旗印の下にいるであろう政宗に叫んだ。そして次はやはり幸村と同じく伊達軍と刃を交わすことも無かった

配下の将兵たちに叫んだ。

「狙うは家康の首ただ一つ!!続け!!」

 完全に目の前に広がった人垣の間を幸村を先頭に真田軍が疾風の如く走っていく。

 その様子はずっと見ていたがその様子がどういう意味を持っていたのか、そしてそのやり取りを知りようも無い楓はまた、不安と不透明な

気持ちに押しつぶされそうになった。

「どういうことなのでしょうか?」

 千代が楓に聞くが、それを一番聞きたかったのは楓だった。だがまさか豊臣忍軍を率いる立場からそのようなことは言えず、楓も正確な

答えは出せなかった。

「分からぬ・・・。だがあのまま行ったら徳川の本隊の方へ行くことになるが・・・。徳川の本陣の後背にぶつかるはずだ。」

「でしたら、つまり伊達は徳川の後ろを守る役目を仰せつかっていた訳でございますよね。ならば何故ああも簡単にというか殆ど

素通りさせたのでございましょうか?」

 千代の質問は最もといえば最もだった。戦況は逐一変化し続けたが、今現在の背後を任せた伊達がああも簡単に真田軍の突破を

許すことは果たして何を示すのか。これが切り合いの末に突破できたのなら話は分かるが、これはそれ以外の何かしらの意図が

あるとしか思えない。このままでは伊達の精鋭を信じて背後を任せた徳川軍がいきなり背後から襲われてしまう。

(・・・背後から襲われる・・・?)

 楓も幸村が達した結論にたどり着こうとしていた。

「松、千代。」

『はっ。』

「秀頼様の下へ一番最初に来たのは片倉景綱であったな?」

「はっ、伊達家の家臣、片倉小十郎景綱でございます。」

 楓はその答えと、今までの状況、そして奥州の若武者のことを考え、少しの時間思いを巡らせた。そしてやはりたどり着いた結論は

幸村と一緒であった。

「・・・松、千代。」

『はっ。』

「・・・おそらく・・・。」

 楓はその推論を松と千代に話した。

 

 

「・・・。」

 幸村は無言で馬を走らせていた。幸村が考えた推論はおそらくあたっているはずだ。政宗はそういう男だ。何故ならば政宗はたった

一人の・・・。

 

 

 楓が幸村と出会ったのは楓がまだ豊臣忍軍の頭領になる前であった。

 豊臣方からの密書を幸村に届ける。その任務が楓に与えられ、その時が楓と幸村が始めて出会う時になるはずであった。

 楓は幸村が滞在する居城へ夜に忍び込んだ。たとえ幸村が豊臣方の武将であったとしてもその時は関が原後で、真田家の配下全てが

完全に豊臣家に臣従しているかどうか分からなかったため、あくまでも幸村一人にだけ届けるという事になっていた。

 そして楓はその任務を完璧に遂行していた。

 真田家の将兵に見つかることなく、幸村がいつも一人でいる館の部屋の屋根裏に忍び込み、天井のはりにしゃがみ、天井板の

木の節の穴から下を覗き込んだ。

 だがそこで楓は楓には珍しいほどの動揺を見せた。

「!?」

 幸村は武芸の鍛錬のための装束を脱いでいるところであった。それ自体はなんらおかしいところは無い。これから寝巻きに着替えるので

あろう。だがその装束の下に幸村は何重にもさらしを巻いていたのだ。そしてそのさらしを解いていくとその下から見えたのは無理に

押しつぶされたたわわな乳房。

 楓はその気配を幸村ほどの武将に気取られること無く天井裏に忍び込めるほどの腕を持っていたのだが、その光景に激しく動揺する。

だがそれでも将来は豊臣の忍軍を任せられるほどの忍びである。何よりあの幸村に気配を悟られていないのだ。楓はその動揺を外に

見せることは無かった。だがその内心だけの動揺は幸村にとっては十分すぎるほどであった。

「何者!?」

 咄嗟ながら胸を左手で隠し、右手で壁にかけてある二股の槍を手に取る。だが楓は任務があるためその場から逃げるようなことはしない。

また幸村も天井裏の人間がその場から離れないことに、その槍を手に握ったままその人間の次の行動を待つ。

 そこで楓がかすかな声で幸村に告げる。

「・・・豊臣の忍びで御座います。幸村様に密書でござりますれば・・・。」

 楓がそう言うと幸村は左手で胸を隠したまま少し後ろに下がった。天井裏の人間がもし仮に豊臣方の人間で無いとすれば天井裏から

下に降りてからいきなり襲われることを避けるためである。

 楓は天井の板を僅かだけずらしそこから下に飛び降りた。

「秀頼様からの密書に御座ります。真田家ということではなく、あくまでも幸村様にということで御座りますれば、他言無用にお願いいたしたく。」

「・・・密書をこれへ。」

 幸村はもう胸を隠そうとはしなかった。僅かな時ながら自分がその気配に気づかなかったのでは、全ては見られていたのであろう。

何より秀頼からの密書とあればそれは何をおいてでも最優先である。

「はっ。」

 楓は姿勢を低くしたまま幸村に近づき、胸元から密書を取り出して幸村に手渡す。幸村は胸を隠していた左手ではだけた胸元を直してから

密書を受け取った。

 密書の内容はおそらくは徳川方ではなく、豊臣方につくようにということであろう。幸村はもとよりそのつもりであったから、そのことに別段

問題は無い。それより問題なのは今の自分の状況であった。

「・・・その方の名を伺っても良いか。」

 楓は少し考えたが本当の名を答える。

「・・・楓に御座います。」

「・・・いまさらどうのこうの隠し立てはせぬ。私はおなごじゃ。ただ楓とやら。」

「はっ。」

「私がおなごであることは真田家の殆んどの者が知らぬ。私がおなごであるなどと分かればひとたび一大事があったときに兵の士気に

かかわる。」

 楓が一番心配していたのもそのことだった。

「そうなれば豊臣家の御為にもならぬ。そなたが今日密書を手渡したのはあくまでも豊臣家が求めていた真田幸村。それで宜しいな。」

「御意に御座います・・・。」

 楓もそのつもりでいた。幸村の武勇は幸村が女であると分かる前から知っていたし、それは豊臣家にとって必要不可欠なものであるとも

思っていた。それが女と分かったからといってその武勇に陰りが出来るわけでもない。だがそのことが一般の兵に伝わったとしたら

真田軍としての強さは果たして今のままでいられるか分からなかった。楓はこのことは一人だけの秘密にしておこうと思っていた。

「楓とやら。」

「はっ。」

「ついて参れ。」

 そう言うと幸村は隣の部屋のふすまを開けた。その部屋には質素な布団がひいてある。幸村は灯りの無い暗いその部屋に進む。楓も

幸村に続いてその部屋に入った。そして幸村はまたその部屋のふすまを閉める。だが隣から明かりがかろうじて漏れるため真っ暗には

ならなかった。また楓自身も目はいい。

「・・・・・・。」

 そして幸村は何も言わずその装束を脱ぎ始めた。さらしを完全にはだけ、上着を脱ぎ捨てて床に置く。その胸は適度に鍛えられているため

決していつも無理に締め付けられているにもかかわらず崩れることなく、乳首は上を向いていた。

 楓はその時はまだ処女であった。当然任務でのそういうことがあることは知っていたが、まだ実際誰かと交わったことは無い。だが幸村の

体を見ていると自分の体がいつになく熱くなってきた。女の裸であれば何度も見たことはある。だが幸村の時ほど体の芯に炎がついた事は

無かった。

 そして幸村が袴を完全に脱ぎ去った時である。

「!!」

 楓は幸村は女だと思っていた。いや今でもその認識は変わっていない。だが目の前にあるのはれっきとした、そして並みの男以上の

男根である。それでも幸村を女だと思ったのは自分も幸村と同じだからである。

 半陰半陽

 男根と女陰を同時に持つ人間。

「・・・この体を知っているような体だな。豊臣忍軍には半陰半陽が多いと聞くが・・・。もしやそなたもか?」

 楓が見せた動揺は幸村が思っていたよりもはるかに小さく、この体のことを知っているように思われた。

「はっ・・・。」

 そういうと楓も服を脱ぎ始めた。楓が来ているのは夜に隠密行動をするときの忍者服である。

 幸村は楓の姿を見て納得した。

「おぬしもか・・・。」

 楓は当時16歳。この歳にして処女であるというのはあまり多くない。そして同時に童貞でもあった。

 楓の股間からも男根がそそり立っていた。それは幸村の体を見て急にその存在を主張し始めたのである。

「・・・まだ経験は浅いようだが、経験はあるのか?」

「・・・御座いません。」

 楓は裸のまま片ひざをついて答えた。

「ならば私がおぬしの初めての相手となろう。」

 そういうと幸村は自分も楓の前でしゃがみ、そっと楓の両肩に手を置く。楓は幸村が込めた僅かな力に任せてその体を後ろに倒していった。

「・・・男根の経験も女陰の経験も無いのか?」

 幸村が楓を完全に布団に倒してから聞いた。

「ございません・・・。」

 幸村は何も言わず楓の男根の先端に舌を這わせた。

「はうっ!!」

 楓は思わず声を上げてしまう。幸村以外の者に見つかってはいけないためわざわざ隠密で行動していたのだが、あまりにも大きな声を

あげてしまったことに自分が一番驚いた。そして慌てて口を結ぶ。

「大丈夫じゃ。ここは他の者がいるところからは離れている。思う存分声を上げてみせよ・・・。」

 幸村はそう言うと舌の先端を男根の先端から徐々に下へ降ろしていく。幸村の舌の先端だけが触れ続けている楓の男根はそそり立って

殆んど腹についてしまっている。

「くぅぅぅぅ・・・。」

 そのいつまで続くかも知れぬ感覚に楓は布団をつかんで抗する。両の手でつかんだ布団は激しくよじれている。

「ふしだらな汁が出てきておるぞ・・・。」

 楓の男根の先端からは透明な先走りの汁がどんどん出てきている。その量はあまりにも多く、すでに楓の腹の上まで糸を引きながら

流れ落ちてしまっている。

「いっ、言わないでくださいませっ・・・!!」

 それは楓自身が驚くくらいの量であった。このような反応を自分の体がするということ自体楓にとっては驚きであった。

 幸村は舌を楓の男根の根元まで這わせた。そこには年齢の割には幼い、だが年齢の割には濡れすぎた女陰があった。

 幸村はその女陰の両脇を両手で持ってそっと外側に開く。中は男を(男根を)知らない女のものらしく鮮やかな桜色である。それも

楓自身が出した陰液によって僅かな光を放っている。

 今度はさっきまでとは打って変わって一気に楓の女陰を責め立てた。

「んはああぁぁぁぁっ!!!!」

しゅ・・・

 幸村が一気に楓の女陰に口をつけて舌を楓の中へ突き刺すと、楓の下半身から全ての力が抜けてしまった。そして楓の女陰から

小水が飛び出してくる。

「あっ!!ああああっ!!!!」

 楓は叫ぶがどうすることも出来ない。下半身に力が入らないのだ。何とか力を入れようとしてもその力が腰の部分で止まってしまっている。

 幸村はその小水を流れるままにしておいた。

「みっ、見ないで下さいませっ・・・。」

 楓は両手で自分の顔を隠す。

 どんな恥辱や苦痛にでも耐えうるように忍びは訓練されているはずなのだが、楓はなぜか自分の恥ずかしい姿を幸村には見られたくなかった。

「かまわぬ。好きなだけ乱れるが良い。自分の体が求めるままに私を求めよ。さすればおぬしと私の二人だけの秘密が出来る。」

「幸村様・・・。」

 幸村も楓には並ならざる思いを抱いていた。何故だかは分からないが、一目見たとき、一人の忍びだけではないものを感じていた。この者に

なら自分の秘密を知られても大丈夫である。そして二人だけの秘密をお互いに共有することで特別な間柄になりたいと思い、楓を寝室へ誘った

のである。

 そして楓は己の思いを幸村に打ち明けた。

「ゆっ、幸村様のおのごで私のおなごを貫いてくださいませ…」

 幸村はゆっくりと楓に覆いかぶさった。

 

 

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