暗蜜 其の三

 

 

 千代は濃濁を吐き出したが下の秀頼は腰の動きを止めなかった。

「はっ・・・うっ・・・うんっ・・・あんっ・・・くうっ・・・ああっ・・・」

 既に千代は其の女性自身からもたらされる快感によって声を漏らすまでに至っていた。

「千代・・・ああ・・・。」

 下から秀頼に突かれつつ、だが更にそれ以上に千代を責めていることに桜は異常なまでに興奮していた。桜は

誰かに責められることも、誰かを責めているほうが好きなのであることを後に落ち着いてから認識することになる。

「むうっ・・・ふぅぅ・・・。」

 ずっと桜を犯していた秀頼から声が漏れ始めた。

「そろそろ・・・私も参るぞ・・・。」

「ああ・・・私に・・・私の中へ秀頼様を下さいませ・・・。」

 桜が堪らないような声で懇願する。

じゅぷっ、じゅくっ、ずるっ、ずぷっ・・・

 秀頼の腰の動きは更に速さと激しさを増していく。

「あっ!!うんっ!!はんっ!!ああっ!!」

 桜は其の腰の動きに喘ぎ声が大きくなっていく。だが千代を責めることを弱めることは無く、千代も更に喘ぎ声

を上げる。

「ああっ!!んんっ!!はあぁぁぁぁ・・・。」

 秀頼の腰の動きは最後の段階を迎えるため限界に近付くほどの激しさになる。

「はうんんんんっ!!!!」

桜は其の動きに過敏に反応し声を上げてしまう。

「くうっ!!参るぞ!!」

どくぅ!!!!

どくどく!!どぴゅ!!・・・ずるずる・・・

「はあああああああうぅぅぅぅぅんっ!!!!!!!!」

其の余りの熱さに桜は絶叫し、そして、

「はあああああああああっ!!!!」

びゅっ!!!!

どくんっ!!・・・どくどく・・・ぴゅるぴゅる・・・

「んああああああああっ!!!!」

 更に桜は千代の中へその子種を思いもかけず大放出してしまった。

どぷっ!!!!!!!!

 千代も其の始めて体験する熱さに体の中から突き上げられるように子種を発射してしまった。

 其の様子に一番驚いたのは三人の様子を脇から見ていた楓と松であった。

 そして二人のうち一番先に行動に移したのは楓であった。

「いけませぬ!!」

 俊敏な動きで立ち上がったと思うと隣の部屋へ足音一つ立てず走り出し、放心状態になりかけている三人の

うち一番上の千代の脇の下から両腕を入れ抱きかかえ結びついている桜から引き離し、少々乱暴とも言える

ほどに布団の上に横にした。

 そうした楓は自分の膝立ちの状態になり千代の両脚を開く。そして楓は千代の秘所に口を近づけた。

「んんんんっ!!!!」

 楓はいきなり千代の女壷へ口をつけたのである。其の行動をすぐに理解したのは既に服を着終え、隣の部屋

で控えていた松だけであった。

じゅるじゅるじゅるじゅる・・・ずぞぉぉぉぉぉぉ・・・

「んはぁぁぁぁ・・・」

 千代は其の秘所からもたらされる感覚に素直に声が出る。

 秀頼は其の行為の意味を理解するのに少々時間がかかったが、またもや放心状態になっている桜とは違い、

松の次に其の行動を理解した。

 楓は千代の女壷から桜の子種を吸い出していたのである。今、何をしなければならないかということを考えれ

ば、これは殆ど其の使命を達成できなかったことといってもよいくらいの愚行である。

 桜が秀頼の射精の余りの快感に一気に射精まで持っていかれるとは予想の範疇には無かったが、それ

にしても迂闊であった。

 こんなことをして果たして意味があるかどうかは分からないが、何もしないでいることは楓の使命感が許さなか

った。

 じゅっ・・・ずずずずっ・・・ずっ・・・ずぞぉぉぉぉ・・・

「はぁぁぁぁ・・・」

 千代はある程度落ち着いて其の楓の行為の意味も既に理解できる状態になったが楓の行為がもたらす快感は

他の愛撫とも何ら変わるものではなく快感は快感で、感度が先程とは全然比べ物にはならない位発達してしまっ

ている千代は声を漏らさないようにする術はまだ知らなかった。

 粗方千代の秘所から桜の子種を吸出し、口の中に入ってくるのは千代自身の淫液だけになった状態になると、

楓は桜から己自身を引き抜き、まだ意識のはっきりと戻らない桜を布団に横にさせ、だが其の怒張はそのままに

胡座をかいている秀頼の前に平伏し、

「申し訳ございませぬ!!私がおりながらこのようなことに・・・。この責任は桜と松に必ずや秀頼様の御子を産ま

せ、豊臣の悲願を達成させることで償いまする・・・。」

 楓は豊臣のくノ一の頭領としてくノ一全体としての責任の取り方を秀頼に述べる。桜と松に生ませるといったの

は豊臣のくノ一として必ず子を産み、其の責を負うという事で、つまりはくノ一としての全体の責任は当然楓にあ

ると言う前提での話である。

 それに対して秀頼は、

「よい、面を上げよ。此度のことは私のせいじゃ。せめて千代のおぼこを桜に散らせようとしたのじゃがの。其の

時点で止めさせておけばよかったのじゃ。悪乗りをしたわしに責がある。其のあとの素早い対処も楓だから出来

たこと。改めて千代にはわしから子種を授ける。桜のを受け入れたのじゃ。わしの如きならば最早何の問題も

無く受け入れられるじゃろう。」

「秀頼様・・・。」

 秀頼は優しすぎる。それは長所でもあるが時には短所になりうることもある。何せ世が世なのである。いや、父

秀吉が残していったものを考えるとそれで無くとも優しすぎるかも知れない位なのだ。全国を統べるものとしてで

は無く、一人の文化人なりに産まれてくれば其の性格も生きる上で災いをもたらすことも無かったのかもしれな

い。

 だが楓は、秀頼が人として「甘い」のではなく、あくまでも「優しすぎる」のであると思っている。秀頼はこのような

時を迎えてさえ家康に恨み言を言うようなことはなかった。家康と実母の間に挟まれながらもどちらの側だけに

組することは考えず何とか二人の間を最悪のものとならないよう心を砕いてきた。

 二人の仲が悪くなることは即ち其の二人を支持する大名、武士、浪人たちの間にも亀裂が走ることと同義でも

ある。それゆえ実母だけの側に立つことが出来なかったのである。先程家康のことを古狸と言ったのも家来の

手前のことであって、本心からそう思っているわけではない。

 おそらく聡明な秀頼のこと、自分自身が大将の器、全国の大名を統べるという能力があったかどうかは分か

っていたであろう。だが自分から逃げたいとか今の立場を投げ出したいと言うことは決してせず、今の自分でで

きる限りのことはしてみせた。

 だが其の努力も最高の結果を迎えることには繋がらず、今日の日を迎えることになる。

 その後、改めて千代は秀頼から子種を授かった。果たして桜のと秀頼のとどちらに軍配が上がるかは分からな

かったが、どちらが優勢であるかは言わずもがなである。

 

 

 「・・・それでは参りまする・・・。」

 楓が松達三人で甲冑を着せている秀頼に頭を垂れて言う。

「最後まで迷惑をかけたの。もう豊臣の悲願などかまわぬ。お主たちは生き長らえ、其の生を全うするがよい。

それが我が最大の悲願じゃ。」

いよいよ最後の刻を迎え、秀頼から思わぬ言葉が口をついて出た。其れは最後を迎えた秀頼の心から直接口を

通して出た本心であった。

 楓は表情を変えなかった。変えなかったが頭を深く垂れ、其の目には黒と茶が混じった色の床がぼやけて見え

ていた。

「・・・行きまする・・・。」

 肯定も否定もせず更に深く頭を一度垂れ、表情は極めて冷静ながら雄弁に感情を表していた目をしながらも、

立ち上がってから秀頼の最後の姿を目に焼き付ける。

 松達三人は秀頼の甲冑をつけ終え、楓の後ろに下がる。

「わしはこれから勝ち目の薄い戦いを挑む。だがお主たちは其れに加わる必要はない。己の幸せのことだけ考え

よ。」

 すでに剣戟と怒号は間近に聞こえる。最早いつ敵が襲ってきてもおかしくはない。

「長い戦いになるかもしれぬがな・・・。」

 秀頼は外を見つめつつボソッと声を発する。

 其の時。今までは怒号と剣戟、そして銃声などしか聞こえてこなかったが、明らかにそれらとは異なる音、甲冑や

具足を付けた者たちが走ってくる音が聞こえてきた。其の方向からは決して友好的とはいえない声と怒号が発せ

られている。

 松と桜、そして千代は腰に下げている忍び用の刀の柄に手を掛け戸の方を向く。だが秀頼が左手で其れを

制し、

「お主らはもう行くのじゃ。わしなら大丈夫、急げ。」

と四人に言い、己の刀の柄に手を掛ける。

 そして其の時。

 律儀にも戸の正面から甲冑と具足をつけた男が十人ほど現れた。其の先頭にたっている人物は其の中で一番

高価そうな甲冑と兜を身につけ、そして秀頼にこう向上を述べた。

「伊達家が家臣、片倉小十郎景綱。秀頼殿とお見受けする。相違ないか?」

 其の手には抜き身の太刀が握られている。

「いかにもわしが秀頼じゃ。伊達家の腹心、片倉景綱殿のご高名は聞き及んでおる。豊臣の将の相手として不足

無し。いざ一騎打ちを所望・・・。」

 ゆっくりと、だが何故かこの場には相応しいとは思えない優雅という言葉がピッタリと当てはまりそうな程鞘から

太刀を引き抜く仕草は見事であった。

 一番この場から去りたくなかったのは楓であろう。だが己の使命を一番重く感じていたのもまた楓であった。

 秀頼の背中を一度見つめると、

「行くぞ!!」

と残りの三人に声をかけ評定所の裏の抜け道に駆け出す。敵の一番の目的は秀頼であって、それ以外の者が、

そしてなんと言っても逃げるのがくノ一四人であるから、抜け道から逃げようとしたところで必死で追うとも思え

ない。嫌な表現であるが秀頼が時間を稼げば稼ぐほど楓達の身は安全になる。

 残された三人は楓の言葉に主君を背に残して駆け出そうとする。

 そして駆け出した。一人のくノ一を除いて。

「でやぁーー!!」

 桜は一度主君と敵に背を向けたものの、心の臓二拍ほど立ち止まった其の後また振り返り、敵目掛けて切り

かかっていった。

「桜!!」

 千代が立ち止まりまた桜たちのほうへ戻ろうとした。が、

「千代!!!!」

 普段はあれほど静かで、大声を上げることなど考えつかないような松が大声で千代の名前を呼ぶ。千代は其の

声に己の使命とかはさて置き、体が勝手にまた抜け道の出口へ向けて走り出していた。

 一番先に駆け出していた楓は後から三人は来るものと思い其の走りを止めることはなかったが、千代と松の

叫び声に走りの速さをやや緩め、後ろを振り返る。なんと言ってもあのような松の叫び声を利くなど滅多なことでは

無い。後ろを振り返り、ややしてから松が、そして其の後すぐ後ろに千代が見えた。そして楓は階段に差し掛かり、

走る速度が遅くなり楓に追いついた松と千代に、

「桜は!?」

と至極当然のことを聞く。

「…それが…敵に切り掛かり…」

とだけ松が答えた。

「くっ…!!使命の重大さが分かっていないのか…!!」

 楓は其の美しい眉間に歳に似合わないしわを作る。これは普段から世話を焼いたり、くノ一を統べるものとして

苦心してきた楓の習慣でもあったが、このときのしわは更に深く、そして表情は苦悶に満ちていた。

(まともに子種を授ることができたのは松だけか…。…くっ…!!)

 こういうときでも楓が考えるのは己自身ではなく、己に与えられた使命と役割であった。

 

 

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